こんにちは、リコです。
毎年2月から3月にかけて、我々離婚事件を扱う弁護士のもとには、依頼者から子どもの受験の合否について続々と報告が入るようになります。
先生、息子が◯◯中学に合格しました!
なんでそんな予備校の先生みたいな状況になるかというと、子どもがどの学校に進学するかによって、離婚協議中の相手(主に夫)からいくら支払ってもらえるかが変わってくるからです。
これはいわゆる私学加算という論点です。
この問題は、私立に通う子どもがいる場合の離婚事件においては、避けては通れません。
そこで、この記事では私学加算について書いてみたいと思います。
Table of Contents
私学加算とは
まずは用語の説明です。
そもそも婚姻費用・養育費とは
おさらいです。このブログでは何度も出てきていますが、
- 婚姻費用=配偶者の生活費+子どもの養育費。離婚するまで支払われ続けるもの。
- 養育費=子どもの養育費。離婚後子どもが大きくなるまで(原則20歳。多くはストレートで大学卒業するまで)支払われ続けるもの。
です。
そして、基本的には、婚姻費用も養育費も、双方の年収をもとに算定表に基づいて算出されます。
ただし、高額所得者(給与所得者の場合は年収2000万円超、自営業者の場合は課税所得1567万円超)の場合には、別途計算が必要になります。
私学加算とは
算定表に基づいて算出される金額は、子どもが公立の学校に通っていることを前提としています。
なので、子どもが私立の学校に通っている場合、算定表の金額しか払ってもらえないと、私立の学費と公立の学費との差額分については、子どもを養育している親の負担になってしまいます。
そこで、子どもが私立に通っている場合には、算定表の金額に上乗せした金額を払ってもらいましょう、というのが私学加算です。
計算方法は何種類かありますが、ざっくりいうと、私立の学費から公立の学費を差し引いた金額を双方の収入で按分して、支払う側の金額を算定表の金額に上乗せするイメージです。
私学加算が認められる場合
この私学加算ですが、子どもが私立に通っていれば、常に認められるというわけではありません。
基本的には、子どもが私立に通うことについて、養育費を支払う側=子どもと別居している親が同意していることが必要とされています。
別居親の同意があると認められる場合
とはいえ、離婚紛争が激化してくると、かなりの割合で、
子どもが私立に通っているのは妻が勝手に決めたことです。私は私立に入れることに同意していません。
といった感じの主張がなされます。
同居中から子どもが私立に通っていた場合
この場合、たとえ別居親が上記のような主張をしたとしても、事実上子どもが私立に通うことを容認していたわけですから、よっぽど特殊な事情がない限りは、別居親の同意があったものとして、私学加算は認められます。
特殊な事情というのは、例えば、学費は全額妻の実家に負担してもらうことを条件に私立に行かせるという妻の念書が残っていて、実際にも妻の実家が全額負担しているような場合などが考えられます。
別居後に子どもが私立に通い始めた場合
この場合には、ちょっと私学加算のハードルが上がります。
別居親が上記のような主張をしていても、
- 別居親が同居中に私立に通わせることに同意していた証拠が残っている場合
- 別居親が同居中に自ら率先して私立合格に向けた準備やサポートを行っていた場合
などには、同意があったものとして、私学加算が認められます。
別居親の同意があると認められない場合
基本的には、私学加算は認められません。
典型的には、別居後に、子どもと同居している親が別居親になんの相談もなく子どもを私立に入学させたような場合です。
もっとも、両親ともに私大卒であるなど、この親の子どもだったら私立行くよね的な雰囲気の場合には、別居親の同意がない場合でも、私学加算が認められることはあり得ます。
具体的な証拠のイメージ
これまで提出したことのある証拠は、こんな感じでしょうか。
- 入学式に別居親が参列した時の写真
- 別居親が受験予定の学校についての傾向と対策を分析したり面接対策をしたりするのに使っていたノート
- 別居親が振込手続をした受験料の領収書(筆跡が別居親)
- 別居親が受験勉強中の子どもを励ます内容のメール
- 別居親に「進学する際のお金は心配ない」と言われた旨の子どもの陳述書・・・などなど。
まとめ
私学加算とは、子どもが私立に通っている場合に算定表の金額に私立学費と公立学費との差額を上乗せして支払ってもらうことです。
原則として、子どもが私立に通うことについての別居親の同意が必要です。
お子様を私立に通わせている・通わせたいという方で、近い将来に離婚しそう・されそうという方は、なるべく相手も私立に通わせることに同意していたことを示す証拠を残しておいた方が良いかと思います。
もちろん、夫婦揃って子どもの合格を素直に喜べることがベストなんですけどね。