こんにちは、リコです。
日々離婚相談を受けていると、結構な頻度でこういった言葉を耳にします。
夫はアスペルガーなんです!
妻は発達障害なんです!
・・・みなさん、簡単にアスペルガーだの発達障害だのと、言いすぎじゃないですか?
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アスペルガー症候群とは
国立精神・神経医療研究センターのホームページの説明によると、
ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)とは
社会的なコミュニケーションや他の人とのやりとりが上手く出来ない、興味や活動が偏るといった特徴を持っていて、・・・問診や心理検査などを通して診断されます。親の育て方が原因ではなく、感情や認知といった部分に関与する脳の異常だと考えられています。
NCNP病院 国立精神・神経医療研究センターのホームページより
ということだそうです。
つまり、その人の性格がどうのこうのということではなくて、れっきとした機能障害ということですよね。
厚生労働省のホームページによると、約100人に1人はいるらしく、男性は女性の4倍ほどいるそうです。
割合的にかなり多いですね。
ということは、離婚相談に来られて「アスペだから離婚したい」と主張される方の配偶者はみんなアスペルガー症候群なのでしょうか?
「アスペだから離婚したい」の実情
私は素人なので、当然医学的な診断はできませんから、もちろん本当にアスペルガー症候群に該当される方もいるのかもしれません。
ですが、多くの場合、単純に相手とコミュニケーションが上手く取れないというだけで、「相手がアスペだから離婚したい」と主張しているように見受けられます。
というのも、アスペルガー症候群だと主張する根拠を聞いていくと、その特徴がご相談者様自身にも当てはまっている場合がすごく多いのです。
夫は、全く空気を読まないんです。こだわりが強くて自分ルールを人に押し付けるし、人の話を全然聞かないんです。それに・・・(以下略)
それ全部あなたのことじゃないですか・・・
みたいな。
また、弁護士は、交渉の過程で相談者の相手方に会うこともあるのですが、相談者がアスペルガー症候群だという相手に実際に会ってみたら、相談者よりも格段に知的レベルが高くて、単純に相手の高度な話に相談者がついていけていないだけなのかな、と思うような場合もあります。
アスペルガー症候群だと言うだけでは離婚は認められない
別に、実際に相手とコミュニケーションが上手く取れなくて、相手のことが嫌いになって離婚したい、となるのはある意味自然の流れなので、その過程で相手のことをアスペルガー症候群なんだと思うこと自体はまああり得るというか、その考え自体を否定するつもりは全くありません。
ただ、困るのは、一度アスペルガー症候群だと決めつけてしまうと、そこで思考停止してしまうのか、なんでも「アスペだから」で片付けてしまって、なぜ離婚したいのかを具体的に説明することが出来ない人が多いことなのです。
民法770条1項4号は、「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」には離婚の訴えを提起できると定めていますが、配偶者がアスペルガー症候群であるということはこれに該当するとは通常考えられていません。もちろん具体的な症状によっては該当すると判断される可能性もないではないかもしれませんが、少なくとも医者の診断もなく、配偶者が一方的にそう決めつけているだけのような場合に、これに該当すると判断されることはまずあり得ません。
そうすると、価値観の不一致やモラハラなどと同様に、「その他婚姻を継続し難い重大な事由がある」として、離婚を求めていくしかないわけです。
その場合、具体的に配偶者のどういったところが嫌で離婚したいのかを根拠とともに主張していくことが必要になるのですが、単に「アスペだから」で思考停止してしまうと、説得的な説明ができず、離婚が認められなくなってしまいます。
これは単なる印象ですが、相談者に「アスペだから離婚したい」と言わせる配偶者は、簡単には離婚に応じないことが多いです。
なので、余計に裁判を見据えてしっかりと離婚したい理由とその証拠を準備する必要性が高いのです。
離婚したければ準備が大切
そんなわけで、配偶者のことを「アスペだから離婚したい」と考えている方がいらっしゃいましたら、なんでも「アスペだから」で片付けてしまうのではなく、具体的に離婚したいと感じた相手の言動を日記などに残したり、相手とのメールや会話の録音を残したりするなど、後日裁判で具体的に離婚したい理由を説明できるように、準備をしておくことをオススメいたします。
もちろん証拠がなくても、別居期間が長ければ、いずれは離婚ができますが、なるべく早期にスムーズに離婚したければ、事前の準備が必ず役に立ちます。