養育費はどこまで細かく決められるのか

こんにちは、リコです。

日々離婚事件を扱っていると、相談者さんや依頼者さんからこんな質問をよくいただきます。

相談者
相談者

子どもが私立の小学校に入学した場合は◯円、公立の小学校に入学した場合は◯円、私立の中学校に入学した場合は◯円、公立の中学校に入学した場合は◯円、私立の(以下略)

・・・って決められますか?

依頼者
依頼者

毎年お互いに源泉徴収票を見せ合って、次の1年の養育費の額を決めるということはできますか?

相談者
相談者

子どもが中学に入学するタイミング、高校に入学するタイミング、大学に入学するタイミングで養育費を見直すことはできますか?

結論

養育費については、当事者双方が合意すれば、どのような決め方も可能です。

ただし、実際には、何年も先のことは誰にもわからないので、細かく具体的に決めることについてはどちらか一方が抵抗を示すことがほとんどです。

裁判所も何年も先まで縛ることには消極的なので、実務上は、

子ども一人につき◯円を、◯歳まで、毎月支払う

ということだけを決めることがほとんどです。

養育費の決め方

養育費というのは、子どもの養育に係る費用のことです。

裁判所では、婚姻費用(=養育費+配偶者の生活費)や養育費を決めるための算定表というものを用意しています(算定表はこちら)。

なので、

妻

毎月◯万円支払って!

という妻の要求に夫が応じなければ、基本的には、双方の年収資料を見せ合って、算定表どおりの金額に決まるという形になります。

ただし、算定表で想定されているのは、支払う側の年収が2000万円までなので、それを超える収入がある人の場合には、算定表のもとになっている計算式に当てはめたりして別途計算する必要があります。

基準時点

基本的には、直近の双方の収入状況を見ます。

年収というものはそんなに極端に変動しないという考えから、前年の源泉徴収票を開示し合うのが通常ですが、例えば直近で転職して大幅に年収が変動したとか、仕事を辞めた等の事情がある場合には、前年の源泉徴収票ではなく、直近の給与明細等、前年の年収から変動があったことを示す資料の提出が求められることになります。

また、手続が長期化していて、一度源泉徴収票を開示し合っているけれども、次の源泉徴収票が出る時期に差し掛かってしまったという場合には、裁判所からは新しい源泉徴収票を提出するように、と言われることが多いです。

支払の終期

裁判所的には、20歳まで、というのが原則です。

ただし、最近では大学に進学するケースが多いので、両親が大学を出ているような場合にはたいていストレートで大学を卒業するまで(子どもが22歳になった後に来る3月まで)と決めることが多いです。

両親が医者の場合で、子どもも医者になることが期待されるような場合には、最初から6年制の大学を想定して24歳の次の3月までとすることもあるようです。

支払う側が

夫

20歳までしか支払わない!

と主張する場合には、

裁判所
裁判所

わかりました。それでは20歳までにしましょう。ただし、20際の時点で子どもが大学に進学している場合には、22歳になった後の3月までということにしましょう。

という形で決着をつけることがほとんどです。

私

たまに当事者双方が20歳で合意しているのに、こうするように言ってくる裁判官もいて、支払う側からすると、オイオイってなります・・・

将来の変動

事情の変更があった時に、変更があって養育費を増額したいor減額したいと思った側から養育費の増額or減額を請求するのが基本です。

つまり、事情の変更さえあれば、当事者は何度でも養育費を決め直すことができるので、冒頭の相談者のようにあまり細かく決めても将来的に変更されてしまえば意味がなくなってしまうのです。

私

もちろん最初に細かく決めておいた想定の範囲内での事情の変更であれば、改めて増額or減額を請求しても、当初から織り込み済みであるとして増額or減額が認められないこともあり得ますが。

だから、裁判所も将来の変動について詳細にわたって決めるということには消極的なのです。

なので、通常は、

裁判所
裁判所

特別出費条項入れればそれでいいよね?

という対応になります。

特別出費条項というのは、子どもに進学や病気・事故などの特別な出費を要するようなことが起こった場合には、別途当事者間で協議しましょうね、という条項です。

実はこれ、当たり前のことなので、別に入っていても入っていなくても関係ないんですよね・・・

だって、この条項が入っていなくたって、当事者間で協議することはいつでもできるし、相手が協議に応じなければ、調停を申し立てて話し合うことが可能なのですから。

なので、細かく決めておかないと心配な当事者に対してのお守り的な条項というか。

とりあえず、相手方がこの条項を入れたいと主張してきた場合には、これを入れる入れないで揉めても意味がないので、入れることに同意することを依頼者には勧めるようにしています。

そんなわけで、将来の変動については特別出費条項を入れることで対応し、事前に色々な場合を想定して細かく決めるということはほとんどしません

もっとも、事情の変更があったとして増額or減額を請求する場合には、すべての要素について直近の事情を検証し直すので、意外と希望どおりに増額or減額を認めてもらうことは難しかったりするんですけどね。

私

例えば、自分の収入が下がったから増額請求をしたら、実は相手の収入がもっと下がっていて、結果的に減額になってしまうような場合とかですね。

まとめ

以上のとおり、養育費については当事者双方が合意すれば、どんなに細かく決めてもいいのですが、合意できなければ、裁判所は細かく決めることには消極的なので、現在の年収ベースで、◯万円を◯歳まで毎月支払う、と決めることがほとんどです。

養育費を受け取る側からすれば、なるべく細かく決めておきたいところかもしれませんが、たとえ決めても将来的に減額される可能性がある以上は、過度に養育費収入をあてにして人生設計をするのは危険かもしれません。

離婚時に支払ってもらう一時金と養育費とでは、養育費の方が総額が大きくなるため、どうしても養育費を重視しがちなのですが、将来の変更可能性を考慮すれば、養育費をあてにするよりも、なるべく一時金を多めに支払ってもらう方が確実です。

余談:養育費の一括払い

たまに、

相談者
相談者

養育費を一括で受け取りたいんです。

とご相談を受けることがあるのですが、これは全くオススメしません。

なぜかというと、贈与税がバカ高いからです。

通常、養育費には贈与税はかかりませんが、国税庁の説明によると、「贈与税がかからない財産は、生活費や教育費として必要な都度直接これらに充てるためのものに限られ」るので、一括で受け取ると贈与税がかかってしまうのです。

例えば、シミュレーションサイトで計算してみたところ、毎月10万円の養育費15年分を一括で受け取るとすると、総額1800万円になりますが、そのうち600万円近くを税金として持っていかれることになってしまいます。

なので、仮に養育費の一括払いを望むのであれば、養育費の取り決めはせずに、その分財産分与として多めに支払ってもらうという約束をするのが良いかと思います。

私

財産分与の場合は、過度に多すぎなければ贈与税はかかりません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA