こんにちは、リコです。
依頼を受けて離婚協議を進めているときに、もともと離婚をしたいと言い出したはずの夫が、やっぱり離婚しないと言い出す場合があります。
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離婚はしたいけど・・・
浮気相手と結婚したい
妻を女性として見れない
妻のモラハラがひどい
・・・
理由は様々あれど、意を決して離婚への一歩を踏み出したはずの夫が、
やっぱ離婚すんのやめない?
と言ってくる場合があるのです。
「押してダメなら引いてみよう」という記事に書いたとおり、夫から妻に離婚を突き付ける場合には、基本的に心変わりすることはありません。
じゃあなんで前言を翻すのかというと、
想定以上に金がかかる
という現実にぶち当たったからです。
その主な原因は財産分与。
財産分与のインパクト
ご存知のとおり、財産分与とは、婚姻中に二人で増やした財産(共有財産)を半分に分けましょう、という制度です。
どの財産を半分にするかについては、別居開始時点に存在するプラスの財産の離婚時点の価値で判断するというのが原則です。
なぜ想定よりも金額が大きくなる事態に直面するかというと、実際手元にある現預金以外にも様々なものが分与対象の共有財産に入ってくるからです。
例えば、
不動産。これは、離婚時点の不動産価格から別居開始時点の残ローンを引いた金額が共有財産になります。
解約返戻金が発生するタイプの保険。これは、別居開始時点で解約したとした場合に戻ってくる解約返戻金の額が共有財産になります。
株式や投資信託等。これらは、別居開始時点で保有している株式等の離婚時点の価格(離婚時点までに売却している場合は売却価格)が共有財産になります。
一番キツイのが、退職金や企業年金。これらは、別居開始時点で退職したとした場合に受け取れる金額が共有財産になります。
他にも、リセールバリューの高い高級外車などは共有財産になります。
国産車や家電等、ほとんどリセールバリューがつかないものは、通常は共有財産に含めずに処理することが多いです。
こうしたものって、解約したり、売却したりしないと現金化できないですよね。退職金に至っては、実際に退職しないと現金化できません。
だけど、共有財産に含まれる以上は、その半額を捻出して相手に支払わないといけないわけです。
だから、せっかくこれまで現金以外の形で資産形成を行ってきたとしても、それらを現金化しないといけなくなってしまうのです。
現実は厳しい
夫がこうした事実に気づくのは、かなり離婚協議が進んでからです。
離婚を突き付けられた妻が自分で分与額を計算するのはかなり難しいため、たいていの場合、弁護士が間に入って、ある程度具体的な対象財産や金額を示した時点です。
妻と二人だけで話していた時は、数百万円渡せば納得するって言ってたのに、後日弁護士を通じて数千万円要求された、みたいな場合です。
だいたい夫から金額提示とともに離婚を突き付けられた妻は、その金額で離婚に応じることが合理的なのかどうかを検証するため弁護士に相談しますから、わかりやすく所有不動産や高級外車などを持っているような場合には、提示金額じゃ全然足りないことが明らか、ということが往々にしてあるのです。
妻としては、
財産分与でそんな金額がもらえるなんて・・・!
と離婚を推し進める方向に転じる場合もありますし、
離婚が成立するまでは婚姻費用を毎月もらえるからこのままでいいや。
といって現状維持を選択する場合もあります。
でもこれ、夫側としては、なかなか悩ましいのですが、離婚の時期をいくら先送りしたって、基本的に財産分与の額はあんまり変わらないんですよ。
もちろん、景気の良し悪しによって、不動産や株式等の価値が変わるので、金額が変わることはあり得るのですが、その基礎となる共有財産は別居開始時点のもので固定されるので、別居から離婚までの期間が長期化したところであまり変動はないのです。
むしろ、先送りする分だけ、その期間分の婚姻費用が上乗せされていきますので、そのまま一生離婚しないという場合でない限りは、先送りの判断は、損失を拡大するだけです。
しかも、そもそも離婚したいと思っている妻と夫婦であり続けるという苦痛に加えてこれらの損失が覆い被さってくるのです。
夫の幸せは・・・
そんなわけで、夫としては、
- 妻と離婚するために諸々の資産を取り崩して妻に財産分与する
- (財産分与しなくて済むように)離婚したい妻と夫婦でい続ける
というなかなかに究極の二択を迫られるわけですね。
しかも、2を選択した場合でも、いずれ離婚になったら結局財産分与はしなければならないという・・・
こういうことまで考えてくると、
男性がなかなか結婚に踏み切れないのも致し方ないのかな・・・
なんて思ったり。
もちろん、財産を溜め込んでいる妻が、財産分与したくなくて
やっぱり離婚やめない?
っていうケースもあるんですけどね。